ヴォーリズの伝道精神は、キリスト教未開の地に、独立・自給で神の国を建設することであった。 彼の信仰は「神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、みな加えて与えられる」(マタイによる福音書第6章33節)という信仰であった。
1919年、ヴォーリズと結婚した一柳満喜子は、ヴォーリズの精神に共感し、その信仰に基づく教育事業に着手した。 満喜子は、「軒下にポリポリお八つを食ベながら何することもなく、たたずんでいる子どもたちに建設的な遊びの場を造る必要を感じ」、まずプレイグランドを開設し、それを1922年、清友園幼稚園に発展させた。(幼児教育の重視)
満喜子の教育観は、4福音書を不動の教材とし、同時に「子どもたちの自由で自発的な協同」に関心を持ち、両者を統合しようとする実践にあった。 これが「イエス・キリストを模範とする人間教育」として提唱されてきた。(満喜子は、「友のために命を捨てる、これより大いなる愛はない」というみ言葉を究極のモデルと考えた)
この教育理念は、幼稚園・小学校では、「よく見る目、よく聞く耳、よく考える頭、よく働く手足の育成」として具体的に示され、中学校・高等学校では、「自己統制カのある自由人の育成」「独立・自主・創造力に富む人間の育成」「愛と信仰を持った知性豊かな国際人の育成」として示されている。
近江兄弟社創立者のひとり、吉田悦蔵は、当時メンソレータム工場で働いていた若い女性たちのために「幸福増進委員会」を組織して女性の教育・福祉のために次のような目標を掲げて勤労女学校を始めた。
創立理念(建学精神)をしっかり踏まえて継承し、また学園を発展させることを前提として、近江兄弟社学園のキリスト教教育を改めて確認したい。
近江兄弟社学園の前身は近江ミッション教育事業部と言い、清友園幼稚園・近江勤労女学校・近江向上学園を運営していた。
戦後、法的に組織整備され、それぞれ学校法人・財団法人となるが、その根本精神を維持して財団から学園への資金提供は続いた。
1975年で財団の資金提供は途切れるが、その理由は、前年クリスマスイブに株式会社が倒産し、財団はその中心的収入源のメンソレータム製造販売権を失ったことにある。
折しも私立学校振興助成法が成立し、財団の資金提供に匹敵する補助金が交付されることになったが、当時の生徒数は幼・小・中・高・定合わせて779名、自立経営は不可能であった。
87年度、生徒総数1,379名となり、ようやく収支均衡した。
生徒数が1,500名に達した89年頃から「自主自立」の経営方針のもとに長期的な施設設備計画に取組み、98年度には「各校園が自立的に経営する」方向性を提案した。
生徒総数は99年度の1,695名をピークに、2006年度は1,501名まで減少したが、2007年度は保育園開設という新しい条件のもと1,687名まで回復した。
学園がマンモス化することは避けたいが、教育条件や教職員の待遇を維持するために1,600名(総定員数2,128名に対し75%)は不可欠であり、施設設備計画を遂行するために1,800名(同85%)は欲しい。
生徒確保のために「地域密着型学園づくり」を提唱している。
今後、国・地方自治体の財政難が一層深刻化し、補助金が削減される傾向があるが、教育水準を維持発展させるために、 1.各校園の定員確保、2.各運営団体の自立経営、3.施設設備のための計画的基本金組入(積立)、4.対費用効果を考えた予算配分、5.客観的財務分析による経営指標の設定に努める。 2009年度に学費改定を行う(全校生)。
近江兄弟社グループ事業体の名称変更の流れに伴い、学園においても法人名には「近江兄弟社」を、校名には「ヴォーリズ」の名を冠したい。
2003年、新幼稚園舎建設と共に「こどもセンター」と称して延長保育等の充実に取り組んで来た。2004年に開始した認可外保育園は、2007年には認可施設「星のひかり保育園」に発展した。今後、「幼保一元化」という国民的課題を担い、認定こども園に進める。
2008年度より近江八幡市金田東保育所の移管を受けて、地域の期待に応えたい。
義務教育部門は六三制の枠組みを越えた再編成が求められており、中等教育の多様化に応じた施策も必要である。
高・大連携は特別推薦入試制度の域を超えて進められており、大学側から求められる水準に達する生徒層の確保・育成が課題である。
2006年に本館を建設し、ほぼ学園の全体像が見えて来た。昭和初期の建造物(登録文化財)から新校舎群まで、全体にヴォーリズデザインの伝統を受継ぐキャンパスが出来つつある。引続き、体育館建設用土地取得に全力を挙げ、取得次第、建設に着手したい。
横断歩道橋、スクールバス乗降場、小・中・高連携校舎、小学校舎更新、認定こども園整備、新規事業等々、施設設備の課題はエンドレスである。
《70周年+3ヶ年事業、1991~99年度》に12億円。《80周年記念事業、2000~03年度》に11億3千万円。
《ヴォーリズ100年記念事業、04~07年度》に約16億円投入予定。
《将来構想、08~22年度》は約20億円と見ている。従って、1991~2022年の30年間の施設設備事業費は約60億円となる。60億円という数字は、通常、高等学校1校を開設する金額であるが、近江兄弟社学園はそれを30年かけてゆっくり行うわけである。